このページの要点
- 入居者が建物の引渡しを受けているなど対抗要件を備えていれば、賃貸人たる地位は承諾なしに買主へ移る。入居者に対抗するには所有権移転登記が要る。
- 敷金の返還債務と費用償還債務は買主が承継する。売買契約書に敷金の明細・引渡し・日割り精算・入居者への通知を書く。
- 貸主が亡くなると相続人が地位を承継する。相続人の窓口を決めて通知し、管理受託契約は委任者の死亡が終了事由になる点を確認する。
- 原契約が期間満了・解約で終わるとき、転借人には通知から6月の猶予がある。承継条項と入居者の個人情報の提供も書面で整える。
結論:貸主が変わっても、入居者の賃貸借は続く。変わるのは「誰に家賃を払い、誰から敷金を返してもらうか」
賃貸住宅の貸主(賃貸人)が変わる場面は、大きく三つあります。貸主が建物を売るとき。貸主が亡くなって相続が起きるとき。サブリースの原契約(マスターリース)が終わり、サブリース会社に代わって建物の所有者が入居者の貸主になるときです。いずれの場面でも、入居者は、自分の知らないところで貸主が代わることになります。入居者から見れば、同じ部屋に住み続けるだけなのに、家賃の払込先、修繕の連絡先、敷金の返還先が変わりかねません。
法律は、この場面で入居者の立場が不安定にならないように、いくつかの規定を置いています。貸主側から見れば、売却や相続のときに、入居者に何を伝え、買主や相続人に何を引き継ぐのかを、書面で整える必要があります。このページで押さえる点は次の5つです。
- 建物が売却されたとき、入居者が建物の引渡しを受けているなど対抗要件を備えていれば、賃貸人たる地位は、入居者の承諾なしに買主に移る(民法605条の2第1項)。
- 地位が移ると、敷金の返還債務と、必要費・有益費の償還債務も買主が承継する(同条4項)。入居者に対抗するには、買主が所有権移転登記を備える必要がある(同条3項)。
- 貸主が亡くなったときは、相続人が賃貸人の権利義務を承継する(民法896条)。相続人が複数なら、家賃の受け取りや管理の窓口を決める。
- サブリースの原契約が期間の満了または解約の申入れで終わるときは、建物の賃貸人は転借人に通知をしなければ終了を対抗できず、通知から6月で転貸借が終わる(借地借家法34条)。
- 契約書には、貸主の交代を想定した承継の条項を置き、入居者への通知、敷金の引継ぎ、個人情報の扱いを書く。
サブリースの規制そのものはサブリース契約書(特定賃貸借契約)の注意点、敷金の返還の基本ルールは敷金・礼金・保証金の返還と控除の書き方で扱います。ここでは、貸主が代わる局面に絞って、書面の整え方を解説します。
建物が売られたとき:賃貸人たる地位の移転と、移らない場合
賃貸住宅が売買されると、貸主が代わります。民法605条の2第1項は、不動産賃貸借の対抗要件(民法605条の登記、借地借家法10条または31条その他の法令の規定によるもの)を備えている場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する、と定めています。建物の賃貸借は、借地借家法31条により、登記がなくても、建物の引渡しがあれば、その後にその建物について物権を取得した者に対しても、効力を生じます。そのため、入居者が部屋の引渡しを受けて住んでいれば、通常は対抗要件を備えていることになります。
この地位の移転は、入居者の承諾を要しません。さらに、同法605条の3は、不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる、と定めています(605条の2第3項・4項を準用します)。売買契約書の中に、賃貸人の地位を買主に移転する旨の合意を置けば、入居者の承諾を取らずに、貸主の交代ができるということです。
一方で、賃貸人の地位が移らない場合もあります。605条の2第2項は、不動産の譲渡人と譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨と、その不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は譲受人に移転しない、と定めています。この場合、入居者の貸主は売主のままです。そして、売主と買主の間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人(またはその承継人)に移転します。買主が建物を所有しながら、売主がそれを借りて入居者に転貸する形に近い構造で、サブリースと似た面があります。
建物の売却と賃貸人たる地位(民法605条の2・605条の3)
| 場面 | 賃貸人は誰か | 入居者の承諾 | 入居者に対抗する要件 |
|---|---|---|---|
| 入居者が対抗要件(建物の引渡しなど)を備えている売却 | 買主(法律上、当然に移転) | 不要 | 買主が所有権移転登記を備える(605条の2第3項) |
| 売主と買主が地位の移転を合意(605条の3) | 買主 | 不要 | 同上(605条の3は、605条の2第3項・4項を準用する) |
| 売主と買主が、地位を売主に留保し、買主が売主に賃貸する合意 | 売主のまま | 不要 | 買主と売主の賃貸借が終われば、地位は買主に移る(605条の2第2項後段) |
| 入居者が対抗要件を備えていない | 605条の2第1項は直接にはあてはまらない | 個別に検討 | 契約や事情に応じて確認が必要 |
表の最後の行は、入居者が建物の引渡しを受けていない、または賃貸借契約の成立前の段階にある場合などで、605条の2第1項がそのままはあてはまりません。このような場合の扱いは、契約書の文言と事情によるため、条文を確かめて個別に判断することになります。
入居者への対抗については、同条3項が、賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない、と定めています。買主は、登記が済むまで、入居者に対して「新しい貸主として家賃を請求する」と主張できません。売買の決済日と登記の日が離れる場合には、その間の家賃を誰がどのように受け取るのかを、売買契約書と、入居者への通知書で揃えておきます。
敷金・家賃・費用の引継ぎ:売買契約書の書き方
貸主が代わるとき、入居者にとって最も重要なのが敷金です。民法622条の2第1項は、賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭)を受け取っている場合において、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき、または賃借人が適法に賃借権を譲り渡したときは、受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた債務の額を控除した残額を返還しなければならない、と定めています。
この敷金の返還債務は、貸主の地位が移るとき、新しい貸主が承継します。605条の2第4項は、賃貸人たる地位が譲受人またはその承継人に移転したときは、民法608条の規定による費用の償還に係る債務(必要費・有益費の償還)と、622条の2第1項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人またはその承継人が承継する、と定めています。
問題は、お金そのものの動きです。法律上、債務は買主に移っても、敷金として預かっていた金銭は、売主の手元にあります。買主が敷金返還債務を負うのに、敷金が買主に渡っていなければ、買主は自分の資金で入居者に返還することになります。そのため、売買契約書には、売主が買主に敷金相当額を引き渡すこと、その時期と方法、引き渡す敷金の明細(住戸ごとの金額)を書きます。敷金の額が入居者の主張する額と食い違っていれば、決済の後に、買主が入居者から多くの返還を求められる事態になりかねません。
書き方の例第○条(賃貸借契約上の地位の承継)
- 売主は、買主に対し、決済日をもって、本物件に係る別紙記載の各賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)の賃貸人たる地位を移転し、買主はこれを承継する。
- 売主は、決済日に、各賃貸借契約に基づき預かっている敷金及び保証金(以下「敷金等」という。)の全額を、別紙の明細に従い、買主に引き渡す。
- 前項の明細の金額が実際の預り額と異なることが判明したときは、売主は、買主に対し、その差額を支払う。
- 決済日の属する月の賃料その他の収益及び公租公課その他の費用は、決済日の前日までを売主、決済日以降を買主に帰属させて日割りにより精算する。
- 売主は、本件賃貸借契約の賃借人に対し、決済日までに、賃貸人たる地位の承継を、書面により通知する。
賃貸人たる地位の移転は、入居者の承諾を要しません。他方、入居者への通知は、家賃の払込先と敷金の返還先を知らせるために必要です。通知の方法と時期は、売主と買主のどちらの責任かを書きます。
書き方の例(一般的な例) 売買に伴う引継ぎの書き方
敷金の扱い
理由敷金は金銭の移動を伴う。債務の承継と金銭の引渡しの両方を書く。
管理会社の扱い
理由管理受託契約は貸主と管理会社の契約で、売買と自動的には移らない。契約の承継条項や管理会社の同意が要るかを、管理受託契約書で確かめる。
入居者への通知
理由連名の通知にすると、賃借人が誰の通知か迷わず、旧貸主への誤払いを避けやすい。
管理会社に管理を任せている場合は、管理受託契約書の中で、貸主が変わったときの扱いを確認します。管理受託契約は、貸主と管理会社の間の契約ですから、貸主が代わっても、新しい貸主に自動的に管理会社との契約が引き継がれるとは限りません。管理受託の書き方は賃貸管理委託契約書の書き方のページで扱っています。
相続が起きたとき:貸主が亡くなる場合と、借主が亡くなる場合
貸主が亡くなったときは、民法896条により、相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(被相続人の一身に専属したものを除きます)。賃貸人たる地位は一身に専属したものではないので、貸主が亡くなっても、賃貸借契約は終了せず、相続人が貸主の地位を引き継ぎます。入居者は、同じ条件で住み続けます。
実務で起きる問題は、相続人が複数いて、遺産分割が終わるまで誰が賃貸住宅の貸主として動くのかが決まらない、という点です。家賃を誰の口座に払うのか、修繕の費用を誰が負担するのか、管理会社への指示を誰が出すのか。入居者や管理会社は、相続人のうち誰を窓口にするかを知りたがります。相続人の間で窓口を決めたら、管理会社と入居者にその旨を書面で伝え、家賃の払込先を変更するときは新しい口座を書面で知らせます。遺産分割の結果、特定の相続人が建物を取得したときは、その相続人が貸主の地位を引き継ぎます。
管理会社との管理受託契約には、注意が必要です。管理受託契約は準委任であり、委任者の死亡は委任の終了事由とされています(民法653条1号、656条)。つまり、契約書に特約がなければ、貸主が亡くなったときに管理受託契約が終了するかどうかが問題になります。もっとも、委任が終了した場合に急迫の事情があるときは、受任者は、委任者の相続人などが委任事務を処理できるようになるまで必要な処分をしなければなりません(同法654条)。実務では、契約書に、貸主が死亡した場合でも相続人との間で契約を継続する旨と、相続人の窓口を届け出る手順を定めておく方法がとられます。
借主が亡くなる場合は、借地借家法36条1項が、居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻または縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦または養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する、と定めています。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後1月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでありません。相続人がいる場合は、民法896条により、相続人が借主の地位を承継します。借主の死亡後の残置物や明渡しの書面は退去・明渡し・立会い・鍵の返却・残置物の書面で扱います。
相続が関わる場面で起きがちなことと、書面の手当て
貸主が亡くなったとき
起きがちなこと
- 相続人が複数で、家賃の受け取りや管理会社への指示を誰が行うか決まらない
- 入居者が、誰に家賃を払えばよいか分からない
- 管理会社が、誰の指示に従うか判断できず、修繕の手配が止まる
書面での手当て
- 相続人の間で窓口を決め、管理会社と入居者に書面で通知する
- 遺産分割が終わるまでの家賃の管理方法(共同の口座など)を決める
- 管理受託契約の連絡先の変更を、書面で行う
借主が亡くなったとき
起きがちなこと
- 同居していた人が、契約上の借主ではなかった
- 相続人が遠方で、部屋の荷物の扱いと家賃の精算が止まる
- 貸主が部屋に立ち入ってよいかが分からない
書面での手当て
- 契約者と同居者の関係を、契約書の頭書と申込書で確認する
- 相続人への通知と、解約・精算の手順を書面で決める
- 部屋への立入りや荷物の取扱いは、契約書の条項と、相続人の同意を確認して進める
マスターリースが終わるとき:転借人(入居者)と貸主の地位
サブリースでは、建物の所有者(貸主)とサブリース会社の間の契約(原契約、マスターリース)と、サブリース会社と入居者の間の契約(転貸借契約、サブリース契約)が、二層になっています。この二層構造は、原契約が終わるとき、転貸借契約がどうなるかという問題を生みます。
借地借家法34条は、建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了または解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができないとし、通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から6月を経過することによって終了する、と定めています。この規定に反する特約で転借人に不利なものは無効です(37条)。原契約が期間の満了や解約の申入れで終わる場合に、契約書で「原契約が終了したときは、転貸借も直ちに終了する」と書いても、通知と6月の猶予を排除する部分は、転借人(入居者)に不利な特約として無効とされます。
民法613条3項も、転借人を守ります。賃借人(サブリース会社)が適法に賃借物を転貸した場合に、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって、転借人に対抗できません。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでないとされています。なお、賃借人の債務不履行による原契約の解除と、転貸借との関係は、事情によって扱いが分かれる分野であり、判決の原文と所管官庁の資料で確認が必要です。
管理業法は、サブリース契約の説明と書面の項目に、この場面の事項を入れています。施行規則45条13号は、特定賃貸借契約が終了した場合における特定転貸事業者の権利義務の承継に関する事項を説明事項に挙げています。同47条7号は、同じ事項を、契約締結後の書面の記載事項としています。貸主は、契約前に、原契約が終了したとき、自分がサブリース会社の転貸人としての地位を引き継ぐのか、引き継ぐ場合に何を引き継ぐのか(転貸借契約書、敷金、入居者の情報、未収の家賃)を、書面で確かめておくべきです。
サブリースの原契約が終了するときの流れ(一般的なイメージ)
実際の流れは契約書と事情で異なります。地位の承継の合意の有無で、入居者に求められる手続が変わります。
書き方の例第○条(原契約の終了時の地位の承継)
- 原契約が期間の満了、解約又は解除その他の事由により終了するときは、乙は、本契約に基づく転貸人としての地位を、甲に承継させるものとする。
- 乙は、前項の承継にあたり、転借人との各転貸借契約書、預かっている敷金、転借人の連絡先その他承継に必要な資料を、承継の日までに甲に引き渡す。
- 乙は、転借人に対し、承継の日までに、甲への承継の事実と、甲の連絡先、家賃の払込先を、書面により通知する。
- 甲は、前項の承継により転借人から預かった敷金の返還債務を承継する。ただし、乙が敷金を甲に引き渡さなかったときは、甲は、乙に対し、その額の支払を求めることができる。
甲は建物の所有者、乙はサブリース会社を指す例です。承継の合意を原契約に置くだけでなく、入居者が求める手続の実際に合わせて、通知の期限を書きます。
入居者の個人情報の引継ぎ:売買・承継のときに何を渡すか
貸主が代わるとき、入居者の氏名、連絡先、勤務先、保証人の情報など、入居者の個人情報が、旧貸主から新貸主へ渡されます。これらの情報は、個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」)の規律を受けます。
個人情報保護法27条1項は、個人情報取扱事業者は、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない、と定めています。ただし、同条5項は、一定の場合には、データの提供を受ける者は第三者に該当しない、とします。その一つが、合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合(同項2号)、もう一つが、利用目的の達成に必要な範囲内で個人データの取扱いを委託することに伴って提供される場合(同項1号)です。また、18条2項は、合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業を承継することに伴って個人情報を取得した場合は、承継前における利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはならない、と定めています。
賃貸住宅の売却は、事業の承継にあたる場合もあれば、単なる物件の売買と見られる場合もあり、取引の形によって整理が分かれ得ます。そのため、入居者の同意を得て情報を渡すのか、事業承継に伴う提供として整理するのかを、取引の実態に即して、個人情報保護委員会のガイドライン等で確認する必要があります。実務では、入居者との賃貸借契約書に、貸主の変更に伴い、入居者の情報を新しい貸主に提供することがある旨と、提供する情報の範囲を、あらかじめ記載しておく方法が取られます。
書き方の例(一般的な例) 入居者情報の引継ぎに関する書き方
賃貸借契約書への記載
理由提供の目的、相手方、範囲を契約書に示すと、同意の根拠が書面で残る。
売買契約書の条項
理由引き渡す情報の範囲と、買主が使える目的を限る。
起きがちなこと:通知と引継ぎの抜けが、入居者の混乱を生む
貸主の交代は、売買契約や遺産分割という大きな出来事の陰に隠れて、入居者向けの手続が忘れられがちです。最後に、起きがちなことと、手当ての要点を整理します。
貸主の交代時に確かめる点(チェックリスト)
- 新しい貸主(または相続人の窓口)の氏名・住所・連絡先を、入居者に書面で通知したか。
- 家賃の払込先が変わる場合、新しい口座と、変更日を書面で知らせたか(旧口座への誤払いの扱いも決めたか)。
- 預かっている敷金・保証金の総額と、住戸ごとの明細が、売主と買主(または相続人)の間で一致しているか。
- 決済日の前後の家賃・公租公課・管理費の日割り精算を、契約書に書いたか。
- 管理受託契約や修繕の発注先を、新しい貸主が引き継ぐかを、管理会社に確認したか。
- 入居者の個人情報の引継ぎの範囲と、利用目的を決めたか。
- サブリースの原契約が終わる場合、転借人への通知(6月前)と、貸主への地位の承継の合意をしたか。
起きがちなこと(貸主が変わる場面)
- 売買で貸主が代わったが、入居者への通知が遅れ、入居者が旧貸主の口座に家賃を払い続けた。
- 敷金の額の把握が売主と買主で食い違い、退去時に買主が多くの返還を求められた。
- 登記が済む前に、買主が入居者に家賃を請求し、入居者が応じてよいか判断できなかった。
- 相続が起きたが、相続人の窓口が決まらず、管理会社への指示が出ないまま修繕が止まった。
- サブリースの原契約が終わる日を、入居者が知らされないまま迎え、入居者が突然の退去を求められると思い込んだ。
- 承継の条項はあったが、通知の期限や方法が書かれておらず、入居者への案内が出なかった。
よくあるご質問
賃貸住宅が売られたら、入居者は契約を結び直す必要がありますか。
入居者が建物の引渡しを受けているなど対抗要件を備えていれば、民法605条の2第1項により、賃貸人たる地位は買主に移り、賃貸借契約はそのまま続きます。入居者の承諾は不要です。また、譲渡人と譲受人の合意で地位を移すこともできます(民法605条の3)。契約を結び直すか、覚書で承継を確認するかは、実務上の運用です。
買主が新しい貸主として家賃を請求するには、何が必要ですか。
民法605条の2第3項により、賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができません。登記が済んでいない間は、買主は入居者に対し、新しい貸主として家賃を請求することを主張できません。売買契約書で、決済日と登記の時期に応じた家賃の扱いを決めておきます。
預けた敷金は、貸主が代わったらどうなりますか。
民法605条の2第4項により、敷金の返還に係る債務は、賃貸人たる地位を承継した譲受人(またはその承継人)が承継します。入居者は、退去時に、新しい貸主に対して敷金の返還を求めます。売主から買主へ敷金相当額が引き渡されているかどうかは、売主と買主の間の問題で、売買契約書で決めておきます。
貸主が亡くなったら、賃貸借契約は終わりますか。
終わりません。民法896条により、相続人は、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。賃貸人たる地位は一身専属のものではないため、相続人が貸主の地位を引き継ぎます。相続人が複数いる場合は、窓口を決めて、管理会社と入居者に通知することが大切です。
サブリースの原契約が終わったら、入居者はすぐ出なければなりませんか。
期間の満了または解約の申入れで原契約が終わる場合、建物の賃貸人は転借人に通知をしなければ終了を対抗できず、通知から6月を経過して転貸借が終わります(借地借家法34条)。この規定に反する特約で転借人に不利なものは無効です(同法37条)。また、賃貸人とサブリース会社の合意による解除は、原則として転借人に対抗できません(民法613条3項)。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の賃貸借への当てはめは、契約書の文言、物件の状況、当事者の事情によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov 法令検索(法令API)で確認した現行のものに基づき、まだ施行されていない改正は現行の内容として扱っていません。参考: e-Gov法令検索 / 国土交通省 / 消費者庁 / 法務省