賃貸住宅のオーナー・管理会社・入居者・保証人の書面を見直す方へ賃貸住宅の揉めごとを、
契約書の条文から整理する
賃貸住宅の揉めごとは、入居の日ではなく、更新、設備の故障、家賃の遅れ、退去の日に起きます。一枚の契約書の裏には、オーナー、管理会社、サブリース会社、入居者、保証会社、連帯保証人と、複数の当事者がつながっているため、どこで誰が何を負うのかが書面で見えないと、費用の押し付け合いになりがちです。このガイドは、住宅の賃貸借に絞って、管理受託契約、サブリース、貸主の交代、入居申込、更新、修繕、敷金、原状回復、家賃保証、退去の精算、入居中のトラブルまでを、民法、借地借家法、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律などの条文を根拠に整理した解説です。事業用の店舗や事務所の賃貸借は、このガイドの対象外です。
賃貸住宅を管理に出す・借り上げに出す方

自主管理・管理受託・サブリースの違いから決める
賃貸住宅の運営には、オーナーが自分で管理する型、管理会社に管理業務を委託する型、管理会社に借り上げてもらい入居者に転貸してもらう型があります。入居者の賃貸人がだれになるか、家賃の入金先がどこか、費用をだれが負うかは、型によって変わります。
管理を委託する契約の書き方は、管理業務の範囲と報酬に含まれない費用、家賃・敷金の管理と報告、再委託、解除と更新といった点で整理できます。
「家賃保証」のサブリースを検討している方

特定賃貸借契約の規制と、賃料減額・解約の条件
借り上げの形のサブリースは、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律で、誇大広告の禁止、不当な勧誘の禁止、契約前の書面の交付と説明などが定められています。「家賃保証」という言い方でも、賃料の減額や解約の条件が契約書に書かれているかを確かめます。
契約が終わるときに転借人と貸主の関係がどうなるかも、書面で確認しておきたい点です。
賃貸借契約書・更新・修繕の書面を見直したい方

契約書の読み方、更新、修繕の負担区分
住宅の賃貸借契約書は、頭書、本文、禁止事項などの別表に分かれ、特約で貸主に有利な条件が重なっていることがあります。借地借家法には、借主に不利な特約を無効とする定めがあり、どの条項が標準でどの条項が特約かの見分けが出発点になります。
更新の通知期間、法定更新、定期借家の再契約、設備の故障の修繕と費用の区分、DIYを認めるときの承諾書も、書面の整理が必要な場面です。
敷金・保証の取り扱いを整えたい方

敷金の返還ルールと、極度額のある連帯保証
敷金は、いかなる名目でも賃料債務などを担保する目的で預けた金銭を指し、賃貸借が終わって明渡しを受けたときに、債務を差し引いた残額を返す、という民法の定めがあります。控除の内訳をどう示すかが、書面の整理の中心です。
個人の連帯保証人には、極度額を定めなければ保証の効力が生じない、という規定があります。保証会社を使う場合の特約と本体契約との関係、緊急連絡先との区別も、書面で分けておきます。
原状回復の請求や特約で迷っている方

通常損耗と特約の範囲を、条文から確かめる
賃借人の原状回復義務には、通常の使用による損耗と経年変化は含まれない、という民法の定めがあります。クリーニング、エアコンの洗浄、鍵交換などを借主負担とする特約が、この定めとどう関係するかが争いの中心です。
貸主が指定した業者の見積額を事前に払わせる定めや、入居時からの不具合を示す記録の取り方も、書面と運用の両面で整えておきたい点です。
退去・精算・入居者トラブルの書面を整えたい方

退去の精算、残置物、滞納や無断転貸への書面
退去では、解約予告、日割りの賃料、立会い、鍵の返却、残置物、敷金の精算が一度に動きます。当事者の主張が分かれたときに備え、合意書や記録の書式を先に整えておくと、話の筋道がはっきりします。
家賃の滞納、無断転貸、近隣への迷惑、水漏れなどは、催告と解除、原因の記録といった手順を書面に落とします。自分で鍵を替える、荷物を出すといった自力の措置には限界があります。
このガイドの解説ページ
よくあるご質問
管理会社に任せる契約と、サブリースの契約は、何が違いますか?
管理を任せる契約(管理受託契約)では、オーナーが賃貸人のまま入居者と賃貸借契約を結び、管理会社は維持保全や家賃の管理などの業務の委託を受けます。サブリースは、管理会社が物件を借り上げて入居者に転貸する形で、入居者に対する賃貸人はサブリースをする側になります。賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律には、管理受託契約についての締結前の書面の交付と説明(13条)と、特定賃貸借契約についての締結前の書面の交付と説明(30条)・締結時の書面の交付(31条)が、それぞれ置かれています。
退去したあと、敷金はいつまでに返してもらえますか?
民法622条の2第1項は、賃貸借が終了し、かつ賃貸物の返還を受けたときに、受け取った敷金の額から賃借人の債務の額を控除した残額を返還しなければならない、と定めています。返す時期は、明渡しを受けた後です。なお、賃借人の側から、敷金を未払いの賃料に充てるよう請求することはできません(同条2項)。控除する項目の内訳をどう示すかは、書面でそろえておくと整理しやすくなります。
原状回復の費用は、借主がすべて負担するのですか?
民法621条は、賃借人の原状回復義務から、通常の使用及び収益によって生じた損耗と、賃借物の経年変化を除いています。クリーニングや鍵交換などを借主負担とする特約があるときも、それが通常損耗の負担を借主に課す内容になっていないか、負担の範囲が借主に分かる形で示されているかが問題になります。特約の有効性は条項の文言や説明の経過によって判断が分かれるため、一律には言えません。
契約の更新を拒まれたら、出ていかなければなりませんか?
期間の定めがある建物の賃貸借では、当事者が期間の満了の1年前から6か月前までの間に更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前と同一の条件で更新したものとみなされます(借地借家法26条1項)。貸主から更新を拒む通知をするには、正当の事由が必要です(同法28条)。定期建物賃貸借は、書面による契約と事前の説明が要件で、更新がない代わりに、終了について別の通知の定めがあります(同法38条)。
連帯保証人には、極度額を決めなければいけませんか?
個人が保証人になる根保証契約(賃貸借で将来生じる債務を広く保証する契約が、これに当たります)は、極度額を定めなければ効力を生じません(民法465条の2第2項)。極度額は、書面(または電磁的記録)で定める必要があります。保証会社を利用する場合でも、保証会社とは別に連帯保証人を求める書式があり、緊急連絡先と保証人の区別も書面でそろえておきます。
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運営事務所・ご相談のご案内監修:アトラス行政書士法人(代表社員 荒木素子・特定行政書士) 最終確認日:2026年10月15日