このページの要点
- 管理業務の定義(維持保全と金銭の管理)に募集や契約の締結は入らない。任せたい業務は別紙の一覧に一つずつ書く。
- 登録業者は契約前に11項目を説明し、契約後に書面を交付する。報酬に含まれない費用、再委託、免責、入居者への周知も項目に入っている。
- 家賃・敷金は自己の口座と区分して管理し、契約から1年を超えない期間ごとと期間満了後に管理業務報告書を出す。
- 準委任のため、いつでも解除できるのが原則で、委任者の死亡も終了事由になる。予告期間・引継ぎ・貸主死亡時の扱いを書く。
結論:管理受託契約書は「何を任せ、何を報酬に含め、お金をどう扱い、何を報告し、どう終わるか」の五つで読む
賃貸住宅の管理受託契約とは、賃貸住宅の貸主(以下「委託者」)が、管理会社(以下「管理業者」)に、建物の維持保全や家賃などの金銭の管理を任せる契約です。管理業法12条1項のかっこ書は、管理受託契約を「管理業務の委託を受けることを内容とする契約」と定義しています。民法上は、法律行為でない事務の委託ですから準委任にあたり、委任の規定が準用されます(民法643条・656条)。
この契約書で揉めやすいのは、条文が足りないことよりも、「任せたつもり」と「引き受けたつもり」がずれていることです。委託者は「空室の募集から、入居者の苦情、修繕、家賃の回収までお任せ」と受け取り、管理業者は「点検と修繕の手配と、家賃の送金まで」と考えている、といった食い違いです。契約書は、このずれを書面で埋めるためにあります。次の五つの問いに、契約書の条文で答えられるかを確かめるのが、読み方の基本です。
- 業務の範囲:どの業務を任せ、どの業務を含めないのか。含めない業務はどう扱うのか。
- 報酬と費用:報酬に何が含まれ、何が別に請求されるのか。費用の立替えと精算はどうなるのか。
- 金銭の管理:家賃や敷金を、誰の口座で、どのように分けて預かり、いつ委託者に渡すのか。
- 報告:業務の実施状況を、いつ、どの形で報告するのか。
- 終了:契約期間、更新、解除の方法と、終了時の引継ぎはどうなるのか。
管理業法は、登録した管理業者について、これらの項目を契約の前後に書面で示すことを義務づけています。そのため、この契約書は、業法が求める事項を過不足なく書き込むことが、書き方の出発点になります。以下、条文を確認しながら順に整理します。住宅の運営の型の違いは賃貸住宅の管理と契約書の全体像で、サブリースとの違いはサブリース契約書の注意点で扱います。
管理業務の範囲と、報酬に含まれない費用の書き方
管理業法2条2項は、管理業務を二つに分けています。一つは、賃貸住宅の維持保全で、住宅の居室とその他の部分について、点検、清掃その他の維持を行い、必要な修繕を行うことを指します(維持保全に係る契約の締結の媒介、取次ぎ、代理を行う業務を含みます)。もう一つは、家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理を行う業務で、維持保全と併せて行うものに限ります。
ここで注意したいのは、入居者の募集や、入居者との賃貸借契約の締結は、この「管理業務」の定義に入っていないことです。募集や契約の締結まで任せたい場合は、管理受託契約書の中で、別の業務として範囲と報酬を書く必要があります。賃貸借契約の媒介や代理を業として行う場合の規制は、宅地建物取引業法が別に定めています。管理業務の定義と、実際に頼みたい業務は一致しないことが多いので、契約書の業務の一覧表(別紙)で、一つずつ対応づけます。
任せる業務の範囲を書き分ける(一般的な整理)
| 業務 | 内容の例 | 報酬に含めるか | 書き方の要点 |
|---|---|---|---|
| 点検・清掃 | 共用部の定期清掃、設備の定期点検、巡回 | 含める場合が多い | 頻度と実施方法(月○回、目視のみか、報告書付きか)を書く |
| 修繕の手配 | 故障の連絡を受けて業者を手配し、工事を立ち会う | 手配の手数料は含め、工事費は別とすることが多い | 貸主の事前承認が要る金額の上限(○円まで)を書く。承認なしでよい緊急の場合も決めておく |
| 家賃等の収納 | 家賃、共益費の受領、入金の確認 | 含める場合が多い | 収納口座、貸主への送金の期日、振込手数料の負担を書く |
| 滞納の督促 | 電話・書面による督促 | 含める範囲を決める | 督促の回数や方法の範囲。退去や明渡しの請求に進む場合は別の扱いにする |
| 入居者の苦情対応 | 騒音、設備、近隣の苦情の受付と初動 | 含める場合が多い | 受付の時間帯、緊急時の連絡先、貸主への報告の基準を書く |
| 入居者募集 | 募集広告、内見の案内、申込みの受付 | 別の報酬とすることが多い | 管理業務の定義には入らない。募集条件は貸主が決めるのか、管理業者に任せるのかを書く |
| 更新手続 | 更新の案内、更新契約書の取り交わし | 別の報酬とすることが多い | 更新料の受領と配分、更新を拒む場合の扱いを書く |
| 退去立会い・原状回復工事 | 退去立会い、修繕費の見積り、精算 | 立会いは含め、工事は別とすることが多い | 見積りの承認手順、入居者への請求と貸主への報告を書く |
上の表は書き方の整理です。どの業務を報酬に含めるかは、当事者の合意で決まります。
業務の範囲と並んで重要なのが、報酬に含まれない費用です。管理業法は、管理受託契約を締結する前の説明事項として、「報酬の額並びにその支払の時期及び方法」に加え、「報酬に含まれていない管理業務に関する費用であって、賃貸住宅管理業者が通常必要とするもの」を挙げています(施行規則31条4号・5号)。つまり、管理業者が通常必要とする費用で、報酬に含まれないものは、契約前に委託者に示さなければなりません。
具体的には、設備の修繕工事費、原状回復工事費、消耗品の実費、行政への届出の手数料、法定点検の費用、入居者募集の広告費などが、報酬と別にかかる費用になり得ます。報酬が「家賃の○%」とされていても、これらが別途請求されるのであれば、総額は想定より高くなります。契約書には、費用の項目と、立替え後の精算の方法(毎月の送金時に差し引くのか、別途請求するのか)を書いておきます。
書き方の例第○条(報酬及び報酬に含まれない費用)
- 委託者は、管理業者に対し、本契約に基づく管理業務の報酬として、毎月○日までに、別紙記載の方法により算定した額(税込・税別の別を明記する。)を支払う。
- 管理業者は、前項の報酬に含まれない費用(別紙に定める修繕費、原状回復工事費、消耗品費、法定点検費その他の実費をいう。)を立て替えたときは、立替えの内容を示す書面とともに、委託者に請求する。
- 管理業者は、一件につき○円を超える修繕その他の工事を行うときは、あらかじめ委託者の承諾を得なければならない。ただし、人の生命若しくは身体に危険が及ぶおそれがあるとき、又は漏水その他入居者の居住に支障を生じ、かつ、委託者の承諾を得る時間的余裕がないときは、この限りでない。この場合、管理業者は、遅滞なく委託者に報告する。
第3項の金額と例外は、貸主ごとに決める項目です。例外を置く場合は、報告の期限も併せて書きます。
説明の書面と締結時の書面:登録業者が示すべき事項
登録した管理業者(200戸以上を受託する事業者など)は、管理受託契約を結ぶ前と、結んだ後の二度、書面を出さなければなりません。管理業法13条1項は、契約を締結しようとするとき、委託しようとする賃貸人に対し、契約を締結するまでに、契約の内容と履行に関する事項で国土交通省令で定めるものについて、書面を交付して説明しなければならないと定めています。同法14条1項は、契約を締結したとき、遅滞なく、一定の事項を記載した書面を交付しなければならないと定めています。
13条1項の説明義務には、例外があります。委託者が、管理業に係る専門的知識と経験を有すると認められる者として省令で定めるものであるときは、説明義務はかかりません。施行規則30条は、賃貸住宅管理業者、特定転貸事業者、宅地建物取引業者、特定目的会社、組合、賃貸住宅に係る信託の受託者(一定の場合に限る)、独立行政法人都市再生機構、地方住宅供給公社を挙げています。個人のオーナーが委託者であるときは、この例外に当たらないので、説明の対象になります。
説明すべき事項は、施行規則31条が11項目を定めています。契約書の条文構成と対応させると、書き漏れが見つかります。
管理受託契約の締結前の説明事項と、契約書で対応させる条項(施行規則31条)
| 号 | 説明事項 | 契約書の対応 | 確認のポイント |
|---|---|---|---|
| 1号 | 管理業者の商号・名称・氏名、登録年月日・登録番号 | 契約書の前文または当事者欄 | 登録番号が書面に載っているか |
| 2号 | 管理業務の対象となる賃貸住宅 | 物件の表示(別紙) | 住戸番号や共用部の範囲まで特定されているか |
| 3号 | 管理業務の内容と実施方法 | 業務の範囲(別紙) | 「その他附帯する業務」で範囲が広がらないか |
| 4号 | 報酬の額と支払の時期・方法 | 報酬の条項 | 税込・税別の別、月の締め日と支払日 |
| 5号 | 報酬に含まれていない費用で、通常必要とするもの | 費用の条項 | 費用の項目と精算の方法 |
| 6号 | 管理業務の一部の再委託に関する事項 | 再委託の条項 | 再委託先の範囲と責任 |
| 7号 | 責任と免責に関する事項 | 損害賠償・免責の条項 | 免責の範囲に、管理業者の故意・過失が含まれないか |
| 8号 | 委託者への報告(法20条)に関する事項 | 報告の条項 | 報告の頻度と方法 |
| 9号 | 契約期間に関する事項 | 期間の条項 | 開始日と終了日、更新の有無 |
| 10号 | 入居者に対する、3号の事項の周知に関する事項 | 入居者への周知の条項 | 誰が、いつ、どの方法で入居者に知らせるか |
| 11号 | 契約の更新と解除に関する事項 | 更新・解除の条項 | 予告期間、解除の事由、解除に伴う精算 |
号の番号と文言は、施行規則31条を確認した内容です。契約書の条番号は、各社の様式で異なります。
契約を結んだ後の書面(14条書面)には、管理業務の対象となる賃貸住宅、管理業務の実施方法、契約期間に関する事項、報酬に関する事項、契約の更新または解除に関する定めがあるときはその内容、が必須です(14条1項1号から5号)。そのほか、施行規則35条2項が、管理業者の商号・登録年月日・登録番号、管理業務の内容、再委託に関する定めがあるときはその内容、責任と免責に関する定めがあるときはその内容、報告に関する事項、入居者への周知に関する事項、を挙げています。
書面の交付は、委託者の承諾を得れば、電磁的方法(電子メールやクラウド上の閲覧など)で代えることができます(13条2項、14条2項)。この場合、書面を交付したものとみなされます。実務では、契約書自体を電子契約で結び、説明書面もPDFで提供する運用が広がっています。承諾を得た記録を残しておくことが、後で提供したかどうかを争わないための備えになります。
罰則も確認しておきます。14条1項に違反して、書面を交付せず、または必要な事項を記載しない書面もしくは虚偽の記載のある書面を交付したときは、30万円以下の罰金です(44条4号)。業務管理者の選任義務(12条1項)の違反も、30万円以下の罰金です(44条2号)。13条の説明義務の違反は、44条の罰金の列挙にはありませんが、業務改善命令(22条)や、登録の取消し・業務停止(23条)の対象になり得ます。
業務管理者とは、営業所または事務所ごとに一人以上選任しなければならない者で、管理受託契約の内容の明確性、維持保全の実施方法の妥当性などについて、管理と監督を行います(12条1項)。施行規則13条は、その事務として、13条・14条の書面の交付と説明、維持保全と金銭管理の実施、帳簿の備付け、定期報告、秘密の保持、入居者からの苦情の処理などを挙げています。要件は、管理業務に関し2年以上の実務の経験を有する者などで、登録証明事業による証明を受けた者、または宅地建物取引士で国土交通大臣の指定する講習を修了した者などです(施行規則14条)。委託者は、契約書の相手方である管理業者に、営業所ごとの業務管理者が置かれているかを尋ねることができます。
金銭の管理:分別管理と定期報告、委託者に届くお金
管理受託契約が複雑になるのは、家賃や敷金を管理業者が預かる場面です。管理業者の口座に入った家賃は、管理業者のものではなく、委託者のものです。管理業者が倒産したり、他の委託者の分と混ざったりすれば、委託者のお金が戻らないおそれがあります。管理業法16条は、そのために、家賃、敷金、共益費その他の金銭を、自己の固有財産および他の管理受託契約に基づく金銭と分別して管理しなければならないと定めています。
分別の方法は、施行規則36条が定めています。管理受託契約に基づく業務で受領する家賃、敷金、共益費などを管理するための口座を、自己の固有財産を管理する口座と明確に区分し、かつ、その金銭がいずれの管理受託契約に基づく業務に係るものか、帳簿により直ちに判別できる状態で管理する方法です。契約書では、この趣旨を受けて、家賃を預かる口座の名義や、送金の期日、控除できる項目(管理報酬や立替費用)を書いておきます。
民法も、受任者に、委任事務を処理するにあたって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡す義務(646条1項)と、請求があるときはいつでも委任事務の処理の状況を報告する義務(645条)を課しています。業法はこの民法の規律を上乗せして、定期報告を義務づけています。管理業法20条は、管理業務の実施状況などを定期的に委託者に報告しなければならないと定め、施行規則40条1項が具体的な方法を定めています。管理受託契約を締結した日から1年を超えない期間ごとに、および管理受託契約の期間の満了後遅滞なく、管理業務報告書を作成して委託者に交付して説明しなければなりません。記載事項は、報告の対象となる期間、管理業務の実施状況、入居者からの苦情の発生状況と対応状況です。
書き方の例(一般的な例) 金銭の管理と報告の書き方
家賃の送金
理由分別管理の方法と、差引きの内訳の通知を書くと、業法の趣旨と契約書が揃い、後の精算で食い違いが出にくい。
敷金の預かり
理由敷金の返還債務を負うのは貸主であるため、預かりの帰属と、精算書の交付先を書く。
定期報告
理由「必要に応じて」では、報告の時期が定まらない。業法の期間と記載事項を、そのまま書き込む。
再委託、免責、入居者への周知:管理業者の責任の線を引く
管理業者は、清掃、設備点検、修繕を、自社の従業員だけでなく、協力業者に任せるのが通常です。管理業法15条は、委託者から委託を受けた管理業務の全部を他の者に再委託してはならないと定めています。逆に言えば、管理業務の一部の再委託は、禁止されていません。そのかわり、再委託に関する事項は、契約前の説明事項(施行規則31条6号)と、契約後の書面の記載事項(同35条2項3号)に入っています。
契約書では、再委託先の範囲(点検、清掃、修繕などの特定の業務に限る、など)と、再委託先の行為について管理業者が責任を負うこと、を書きます。再委託先の過失で入居者や第三者に損害が生じた場合に、管理業者が「再委託先の責任だ」として免れる書き方にすると、委託者にとっては、誰に責任を求めるのかが見えなくなります。民法644条は、受任者に、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を課しています。再委託先を使う場合であっても、管理業者の注意義務が軽くなる書き方は、委託者との間で合意しておくべき事項です。
責任と免責に関する事項も、説明事項(施行規則31条7号)です。よく見られるのは、「管理業者は、天災その他の不可抗力による損害について責任を負わない」「管理業者は、委託者の指示に従った結果生じた損害について責任を負わない」といった定めです。これらは、それ自体に不合理はありません。ただし、管理業者の故意または過失による損害まで広く免責する書き方は、委託者の保護に欠けます。契約書では、免責の範囲を、不可抗力や委託者の指示に従った場合などに限定し、管理業者の故意または重大な過失による損害は免責しない、と書くのが整った書き方です。
入居者への周知も、説明事項(同31条10号)です。管理業者が管理業務を行うことは、入居者に知らされなければ、入居者が修繕の連絡先や苦情の窓口を知ることができません。契約書には、管理業者の名称・連絡先・受付時間を、入居者に書面または掲示で周知すること、周知の費用を誰が負担するかを書きます。管理業者が変わるときは、入居者に新しい連絡先と家賃の振込先を伝える方法も決めます。
書き方の例第○条(再委託・責任)
- 管理業者は、本契約に基づく管理業務の全部を、第三者に再委託してはならない。
- 管理業者は、次の各号の業務に限り、あらかじめ委託者に通知した上で、第三者に再委託することができる。一 設備の定期点検 二 清掃 三 修繕工事 四 前各号に附帯する業務
- 管理業者は、前項により再委託した業務について、再委託先の行為による結果につき、自ら行った場合と同一の責任を負う。
- 管理業者の責任は、不可抗力による場合、及び委託者の指示に従った場合を除き、軽減されない。ただし、管理業者に故意又は重大な過失がある場合には、本項の定めにかかわらず、免責されない。
第4項は、免責の範囲を限定する書き方の例です。不可抗力の意味は、天災のほかに何を含めるか、別に決めておきます。
契約期間、更新、解除:委任の「いつでも解除できる」との関係
管理受託契約は準委任ですから、民法651条1項が適用され、各当事者はいつでも契約を解除できます。ただし、相手方に不利な時期に解除した場合や、受任者の利益を目的とする場合などは、損害賠償の責任が生じます(同条2項)。管理業者は、解除に備えて、契約期間と更新、解除の予告期間、解除後の精算を契約書に書くのが通常です。なお、委任は、委任者または受任者の死亡によっても終了します(民法653条1号)。貸主が個人であるときは、貸主が亡くなった場合の契約の扱いも、書いておく項目です。
契約期間は、説明事項(施行規則31条9号)と、契約後の書面の記載事項(管理業法14条1項3号)に挙げられています。更新と解除は、同じく説明事項(31条11号)と、書面の記載事項(14条1項5号)です。実務で気をつけたいのは、自動更新と、委託者からの解除の制限です。自動更新の条項があると、委託者が更新を望まない場合でも、更新拒絶の通知期限を過ぎたために、次の期間も報酬を払い続けることがあります。委託者からの解除について、長い予告期間や違約金が定められている場合は、民法651条が定める「いつでも解除できる」という原則との関係で、その有効性が問題になることがあります。個別の契約の有効性は、契約書の文言と事情によって判断が分かれるため、条文と所管官庁の資料で確認が必要です。
契約が終わるときには、引継ぎが問題になります。民法646条は、受任者が受け取った金銭その他の物の引渡しを定めています。契約書には、預かっている家賃・敷金・共益費の精算と引渡し、鍵、入居者との契約書類、修繕履歴、入居者の連絡先などの引継ぎを、終了後○日以内に行うことを書いておきます。入居者の個人情報の引継ぎについては、委託者への提供が管理業務の委託に伴う提供にあたるか、など、個人情報保護法の確認が必要です。この点は貸主が変わるときの賃貸人の地位のページで関連する場面を扱います。
書き方の例(一般的な例) 更新と解除の書き方
更新
理由自動更新を置く場合は、更新の通知期限を双方に対称にして、通知の方法を書面に限る。
委託者からの解除
理由解除自体に違約金を課すかどうかは、委任の任意解除の原則(民法651条)との関係で、合意の内容と事情を確かめる。
管理業者からの解除
理由管理業者の一方的な解除は、入居者の連絡先が空白になる。引継ぎが終わるまでの業務の継続を書く。
委託者が契約前に自分で確かめる問い
管理受託契約書を受け取ったら、署名の前に、次の問いに答えてみてください。答えが書面に書かれていない問いは、追記または確認が必要な箇所です。
確認管理会社に任せる前の確認の問い
この管理会社は、登録を受けた賃貸住宅管理業者か。
登録を受けた管理業者は、書面に登録年月日と登録番号を記載します。登録の有無は、国土交通省が公表する登録簿でも確認できます(管理業法8条)。
説明の書面は、契約前に受け取ったか。
13条の説明は契約を締結するまでに行われる必要があります。契約書の署名と同時に初めて渡された場合は、内容を読む時間が確保されたかを確かめます。
報酬に含まれない費用の一覧は、書面にあるか。
設備の修繕費、原状回復費、広告費などが別請求のとき、一覧と精算の方法があれば、後で総額の食い違いが起きにくくなります。
家賃と敷金は、自社の口座と分けて管理されるか。
分別管理の方法を尋ね、契約書に口座の区分と送金期日を書いてもらいます(管理業法16条、施行規則36条)。
報告は、いつ、どの形で届くのか。
定期報告は、契約から1年を超えない期間ごとに必要です。月次の収支報告を別に希望するなら、契約書に書きます。
契約を終えるとき、預け金と書類はどう戻るのか。
終了時の引渡しの範囲と期限が、書面にあるかを確かめます。
起きがちなこと:立場ごとに見える食い違い
管理受託契約で起きる揉めごとは、立場によって見え方が違います。委託者、管理業者、入居者のそれぞれに、起きがちなことと、書面での手当てを整理します。
立場別に見る、管理受託契約で起きがちなこと
委託者(貸主)
起きがちなこと
- 報酬は家賃の○%と聞いていたが、修繕費や広告費が別に請求されて総額が高くなった
- 管理会社を変えたいが、解除に違約金がかかり、預けた敷金の戻し方も不明だった
- 年に一度も報告書が来ず、空室や苦情の状況が分からない
書面での手当て
- 報酬に含まれない費用の一覧と、承諾が必要な金額を契約書に置く
- 解除の予告期間と、終了時の精算・引渡しの範囲を書く
- 管理業務報告書の交付の期限と記載事項を書く
管理業者
起きがちなこと
- 委託者が入居者に直接指示を出し、管理業者の対応と食い違った
- 緊急修繕を先に手配したが、委託者が事後に費用の承認を拒んだ
- 委託者の物件の事情(設備の不具合の既往など)を知らされていなかった
書面での手当て
- 委託者の指示の窓口と、管理業者を通す範囲を書く
- 承諾なしで手配できる緊急時の範囲と上限額を書く
- 委託者が管理業者に告知すべき事項(既知の不具合、保険の加入など)を書く
入居者
起きがちなこと
- 誰に修繕を連絡すればよいか分からず、連絡先が貸主と管理会社で違っていた
- 管理会社が変わったのに、家賃の振込先が変更されず二重払いになった
- 管理会社に伝えた内容が、貸主に届いていなかった
書面での手当て
- 管理業者の名称・連絡先・受付時間を、入居者に書面で周知する条項を置く
- 管理業者の変更時は、新旧の連絡先と振込先を書面で通知する
- 入居者からの連絡を貸主に報告する基準を書く
起きがちなこと(管理受託契約の書面)
- 契約書の「管理業務」が定義されず、条文ごとに範囲が違って読める。別紙で業務の一覧を作り、含めない業務も書く。
- 報酬の定めはあるが、報酬に含まれない費用の定めがない。契約後に請求が出て、総額が想定を超える。
- 再委託の定めがなく、協力業者の過失による損害の責任の所在が曖昧になる。
- 解除や更新の条項が片方に有利で、管理会社を変えようとしたときに、違約金や更新拒絶の期限を理由に動けなくなる。
- 家賃の送金が遅れても、遅延の扱いや利息の定めがなく、委託者が請求の根拠に困る。
- 契約が終わったとき、預かっている敷金・鍵・入居者の書類の引継ぎが決まっておらず、入居者への対応が途切れる。
よくあるご質問
賃貸管理委託契約書は、必ず書面で作る必要がありますか。
管理業法14条は、登録した管理業者が管理受託契約を締結したときは、遅滞なく一定の事項を記載した書面を交付しなければならないと定めています。登録していない管理会社との契約でも、民法上の準委任として口頭でも成立しますが、報酬、費用、解除、引継ぎなどの争いを避けるため、書面にしておくのが通常です。電磁的方法で代えることも、委託者の承諾があれば可能です(同条2項、13条2項)。
管理会社に任せれば、設備の修繕義務も管理会社が負いますか。
入居者に対して修繕の義務を負うのは、賃貸人である貸主です(民法606条1項)。管理会社に修繕の手配を任せても、貸主と入居者の関係は変わりません。管理会社に対しては、管理受託契約に基づいて、手配や費用の精算を求める関係になります。契約書で、修繕の承諾の手順と費用の負担を決めておきます。
管理業者が200戸未満の場合、何も規制がないのですか。
管理業法3条の登録義務は200戸以上の受託が対象で、13条以下の規制は登録した管理業者に対するものです。そのため、登録のない管理会社には、これらが直接にはかかりません。ただし、管理受託契約は民法の準委任として、644条の善管注意義務、645条の報告、646条の引渡しなどの規定に従います。契約書でこれらを具体化しておくことが大切です。
報酬に含まれない費用には、どのようなものがありますか。
管理会社の報酬に含まれていない費用であって、管理業者が通常必要とするものは、契約前の説明事項になっています(施行規則31条5号)。設備の修繕費、原状回復費、法定点検費、広告費、消耗品費などが一般に挙げられますが、実際の項目は契約書の別紙で決まります。項目を一覧にし、精算の方法を書いておきます。
契約を途中でやめるときの注意点を教えてください。
準委任の契約では、民法651条により、各当事者がいつでも解除できますが、相手方に不利な時期の解除などでは損害賠償が問題になります。契約書の予告期間や違約金の定めがあれば、その有効性を含めて確認します。解除後は、預かっている家賃・敷金、鍵、入居者の書類などの引継ぎを、期限を決めて行います(民法646条)。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の賃貸借への当てはめは、契約書の文言、物件の状況、当事者の事情によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov 法令検索(法令API)で確認した現行のものに基づき、まだ施行されていない改正は現行の内容として扱っていません。参考: e-Gov法令検索 / 国土交通省 / 消費者庁 / 法務省