このページの要点
- 契約は申込みに対する承諾で成立する(民法522条)。入居申込書は審査のための書面であることが多く、提出だけで成立するとは限らない。
- 重要事項の説明は契約が成立するまでの間に宅地建物取引士が書面を交付して行い(宅地建物取引業法35条1項)、契約書面(37条2項)は成立後に交付される別の書面である。
- 宅地建物取引業者が受領した預り金は、申込みの撤回の際に返還を拒めない(施行規則16条の11第2号)。条文の位置は法律本体ではなく施行規則にある。
- 契約書面に納得できない条項があれば、署名の前に条文を特定して書面で変更を求め、成立後は覚書で合意する。
結論:「申込」と「契約の成立」を分け、お金を預ける前に説明と書面の時期を確かめる
賃貸住宅の入居では、入居申込書の提出、入居審査、申込金や契約金の支払い、重要事項の説明、契約書への署名、鍵の受け取りが短い期間に続きます。この流れの中で揉めごとが起きやすいのは、お金を預けた時点で契約が成立したのかどうか、そして契約の内容をいつ、どの書面で知らされたのかという二点です。入居申込書は多くの場合「この条件で借りたい」という意思を伝えて審査を受けるための書面で、それだけで賃貸借契約が成立するとは限りません。一方、申込書に「申込金は返還しない」といった一文があれば、その意味も確かめる必要があります。
民法は、契約を「申込みに対して相手方が承諾をしたとき」に成立するものとし、契約の成立には法令に特別の定めがある場合を除き書面の作成などの方式を必要としないとしています(民法522条)。つまり、書面がなくても契約は成立し得ますし、逆に申込書があっても承諾がなければ成立していません。入居前の金員をめぐる争いは、この「承諾がいつあったか」の見方と、預かった側が仲介などを業とする事業者かどうかで、整理の筋道が変わります。
このページでは、入居申込から契約までの書面を、申込書、預り金、重要事項説明、契約書面の四つに分けて整理し、最後に、契約書面を受け取った後で条件の変更を求めるときの覚書の位置づけを説明します。入居後の更新や退去の話は別のページで扱います。契約書全体の読み方は住宅の賃貸借契約書の読み方で、敷金の返還ルールは敷金・礼金・保証金の返還と控除で説明しています。
このページの結論(先に確認したいこと)
- 申込書に署名しても、貸主(または貸主側)が承諾するまでは、賃貸借契約が成立したとは限らない。
- 預けるお金の名前(申込金・預り金・契約金・手付・初期費用)より、「何のために」「どの時点で」「どの条件で返すのか」を書面で確かめる。
- 仲介業者などの宅地建物取引業者が関わる取引では、重要事項の説明は契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士が書面を交付して行う(宅地建物取引業法35条1項)。
- 契約書面(宅地建物取引業法37条の書面)は説明の後、契約が成立したときに渡されるものなので、説明の代わりにはならない。
- 契約書面を受け取ってから納得できない条項に気づいたら、署名や支払いの前に、書面で変更を求める。
入居申込書で確かめること:審査のための書面か、契約の申込みか
入居申込書には、氏名、勤務先、収入、同居人、緊急連絡先、連帯保証人または保証会社の利用意向、入居希望日などを書きます。この書面の役割は、大きく二つに分かれます。一つは入居審査の資料で、貸主や管理会社、保証会社が、家賃を継続して払えるか、同居人は誰か、緊急時に連絡が取れるかを確かめるためのものです。もう一つは、借りたいという意思表示で、民法上の「申込み」に当たり得るものです。
申込書の下部に、次のような注意書きがあることがあります。「審査の結果によってはお断りすることがあります」「申込みの撤回は入居日の○日前までに書面で行う」「申込金は契約成立時に初期費用に充当する」。これらは、申込みと承諾の間にある時間帯の扱いを決める定めです。借りようとする側から見ると、承諾の連絡がいつ、どのような形で来るのか(電話か、書面か、契約書の送付か)、審査結果が出る前に払ったお金は何か、が確かめたい点です。
また、申込書の個人情報は、審査のほか、保証会社への提供、緊急連絡先への連絡、管理会社と貸主の間の共有に使われます。個人情報保護法は、個人情報の利用目的をできる限り特定すること、取得の際に利用目的を通知または公表することを事業者に求めています。申込書や同意書に、どの目的で誰に提供するのかが読み取れるか、保証会社の審査に必要な範囲を超えて書かされていないかも見ておきます。条文でいえば、利用目的の特定が17条1項、取得時の通知・公表が21条1項、契約書などの書面で本人から直接取得するときの利用目的の明示が21条2項です。
書き方の例(一般的な例) 入居申込書の注意書き
申込みの効力
理由承諾の時期と契約の成立をひもづけておくと、預り金の返還や撤回の可否を考える基準がはっきりする。
申込みの撤回
理由撤回できる期限、連絡の方法、返還の期限を書面にしておくと、撤回の可否と返還額をめぐる争いが減る。
個人情報の扱い
理由利用目的と提供先が読み取れる書き方にしておく。
申込金・預り金・契約金・手付:名前ではなく「性格」で整理する
契約前に預けるお金は、「申込金」「預り金」「契約金」「申込証拠金」「手付」「初期費用の一部」と、さまざまな名前で呼ばれます。名前がどうであれ、確かめたいのは次の三点です。①契約が成立しなかったときに返すのか。②契約が成立したときに何に充てるのか(賃料・敷金・礼金・仲介手数料・保証料・鍵交換費用など)。③いつ、どのように返すのか。これらが申込書や預り証に書かれていなければ、預けた側は、お金の性格を自分で確かめる必要があります。
契約前に預けるお金の整理(一般的な考え方)
| 呼び方の例 | 一般的な趣旨 | 確かめること |
|---|---|---|
| 申込金・預り金 | 入居の意思を示し、部屋を確保してもらうために預ける。契約が成立しなければ返還する趣旨が多い。 | 契約成立時に何に充当するか、不成立のときの返還の期限、返還しない場合の条件。 |
| 契約金・初期費用の前払い | 契約が成立することを前提に、敷金・礼金・仲介手数料などをあらかじめ払う。 | 契約書面と重要事項の説明を受ける前に払うか。内訳が分かる書面があるか。 |
| 手付 | 契約の成立後に、解除の権利を留保する意味で渡す場合がある(賃貸借では使われることが少ない)。 | 手付と預り金が混同されていないか。契約が成立した後の解除と、成立前の撤回を分けて読む。 |
| 敷金 | 契約後の賃料債務などを担保する。いかなる名目でも担保の趣旨で預けたものは敷金と整理される。 | 返還の時期と控除の内訳は敷金の返還ルールで整理。 |
宅地建物取引業法は、宅地建物取引業者が取引の相手方などから受け取る「支払金」「預り金」を、重要事項の説明の項目の一つに挙げています(宅地建物取引業法35条1項11号)。その範囲は国土交通省令・内閣府令で定められ、代金、交換差金、借賃、権利金、敷金など、どのような名義で授受されるかを問わず、取引の対象の宅地または建物に関して業者が受領する金銭を指します。ただし、受領する額が五十万円未満のものなどは除かれます(宅地建物取引業法施行規則16条の3)。賃貸住宅の入居前の預り金の多くは五十万円未満ですから、この保全措置の説明の対象にならないことも多いのですが、説明の対象かどうかと、返還が必要かどうかは別の問題です。
さらに、宅地建物取引業者は、勧誘に当たって、契約の申込みの撤回を行う相手方に対し、すでに受領した預り金の返還を拒むことが禁じられています。この禁止は、宅地建物取引業法47条の2第3項の委任を受けた施行規則の規定にあり、条文の位置は法律本体ではなく宅地建物取引業法施行規則16条の11第2号です。「47条の2」だけを根拠として挙げると、条文の位置がずれてしまうので、書面や通知で引用するときは、法律と施行規則を分けて確かめます。
ここで押さえたいのは、この規律が宅地建物取引業者を名宛人とするものだという点です。貸主が自分で入居者を募集し、自分の物件を直接貸す場合は、貸主自身は宅地建物取引業(貸借の代理・媒介)を行う者ではないので、仲介業者のような宅地建物取引業法上の説明義務は貸主本人には当てはまりません(宅地建物取引業法2条2号)。その場合でも、預けたお金が何の趣旨かは、民法の契約の成立、不当利得、契約書の定めで整理します。業者かどうかを確かめることが、書面を読む出発点になります。
重要事項説明と契約書面:似ているが役割が違う二つの書面
宅地建物取引業者は、建物の貸借の相手方や、媒介に係る貸借の各当事者に対して、契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、一定の事項を記載した書面を交付して説明させなければなりません(宅地建物取引業法35条1項)。これが重要事項説明です。説明のときは、宅地建物取引士証を提示し(同条4項)、書面には宅地建物取引士が記名します(同条5項)。書面の交付に代えて、相手方の承諾を得て電磁的方法で提供することもできます(同条8項)。
一方、契約が成立したときに交付される書面が、いわゆる37条書面(契約書面)です。賃貸借については、宅地建物取引業者が当事者を代理して契約を締結したとき、または媒介により契約が成立したときに、当事者の氏名・住所、建物を特定する表示、引渡しの時期、契約の解除に関する定め、損害賠償額の予定または違約金に関する定め、不可抗力による損害の負担に関する定め、借賃の額と支払いの時期・方法、借賃以外の金銭の授受に関する定め(額、授受の時期、目的)を記載した書面を交付します(宅地建物取引業法37条2項)。
重要事項説明(35条)と契約書面(37条)の違い
| 比べる点 | 重要事項説明(35条) | 契約書面(37条) |
|---|---|---|
| 時期 | 契約が成立するまでの間 | 契約が成立したとき(賃貸借は2項) |
| 目的 | 借りようとする側が、契約するかどうかを判断する材料を得る | 成立した契約の内容を書面で残す |
| 説明 | 宅地建物取引士が書面を交付して説明する(士証の提示あり) | 書面の交付(宅地建物取引士が記名)。口頭の説明の義務は条文上は置かれていない |
| 主な内容 | 権利関係、法令上の制限、設備の整備状況、契約期間・更新、用途の制限、敷金など契約終了時に精算される金銭の精算、管理の委託先など | 当事者、物件、引渡し時期、解除、損害賠償額の予定・違約金、借賃、借賃以外の金銭など |
| 相手方 | 借りようとする側 | 契約の各当事者(媒介の場合) |
建物の貸借に係る重要事項の項目には、35条1項各号のほかに、省令で定められたものがあります。たとえば、台所・浴室・便所などの設備の整備の状況、契約期間と契約の更新に関する事項、定期建物賃貸借の適用を受ける契約をするときはその旨、用途その他の利用に係る制限、敷金その他いかなる名義で授受されるかを問わず契約終了時に精算することとされている金銭の精算に関する事項、管理が委託されているときの委託先の氏名または商号と所在地などです(宅地建物取引業法施行規則16条の4の3)。つまり、敷金など契約終了時に精算される金銭の精算の方法は、契約の前の重要事項の段階で、説明を受けるべき項目に含まれます。
書き方の例入居申込書・預り証に入れておきたい文言(一般的な例)
- 預り金は、本件建物の賃貸借契約が成立しなかった場合には、申込みの撤回の連絡を受けた日から○日以内に、全額を返還する。
- 預り金は、賃貸借契約が成立した場合には、○○(敷金・賃料・仲介手数料など、充当先を特定する)の一部に充当する。
- 重要事項の説明は、預り金の受領の前(または同日の契約書の署名の前)に行う。説明の日時は預り証または申込書に記入する。
日数と充当先は個別の取引で決めます。「返還しない」と定める場合は、その理由と条件を書き、借りようとする側が事前に読める位置に置くことが必要です。
説明を受けないまま預けた場合の整理の考え方
契約内容の説明を受ける前にお金を預けてしまい、その後で、契約書面の条項に納得できないことが分かる場合があります。たとえば、退去時の原状回復の費用負担、更新料、短期解約の違約金、クリーニング費用などです。こうした場合に、借りようとする側が、貸主側に求めることは、おおむね次の三つの段階で整理できます。
預け入れから契約成立までの時期と、整理の視点(一般的な流れ)
- 申込み入居申込書の提出・審査
申込書の記載内容、審査結果の通知方法、預り金の有無を確かめる。
- 預け入れ申込金・預り金の支払い
預り証の有無、充当先、返還の条件。この時点で契約が成立したのかを書面で確認する。
- 説明重要事項の説明
説明の日時と担当者。契約書面の案を事前に受け取れるかを確かめる。説明を受けた後に、納得できなければ署名しない選択がある。
- 契約契約書への署名・契約書面の交付
成立の時点。署名前に条項の変更を求める。成立後は、合意による変更になる。
- 入居鍵の受け取り・入居
入居時の室内の状態の記録。原状回復の入口になる。
時期の前後が逆になっている取引(先にお金を払い、説明は後)では、その事実を日付とともにメモに残します。
第一に、契約が成立していたかどうか。契約の成立前であれば、借りようとする側は、申込書や預り証の定めに従って申込みを撤回でき、預けた金員の返還を求める話になります。宅地建物取引業者が受領している場合は、前に述べた施行規則16条の11第2号の禁止も、返還を求める理由の一つとして挙げられます。
第二に、重要事項の説明や契約内容の説明が適切に行われたかどうか。重要事項の説明は契約成立前に行う義務があります(宅地建物取引業法35条1項)。説明の前に金員を受け取っていても、それだけで違反と断定できるわけではありませんが、説明を受けないうちに支払いを求める運用は、後で争いになりやすい点です。
第三に、消費者契約法の取消しの可否。借りる側が個人(消費者)で、貸す側または仲介が事業者である場合、事業者が重要事項について事実と異なることを告げた場合や、借りる側の利益になることを告げながら不利益になる事実を故意または重大な過失で告げなかった場合には、契約の申込みまたは承諾の意思表示を取り消せることがあります(消費者契約法4条1項1号、2項)。「重要事項」は、目的物の質・用途その他の内容、対価その他の取引条件で、判断に通常影響を及ぼすべきものとされています(同条5項)。ただし、これは個別の事実に照らして判断されるもので、説明が遅れたという事実だけで取消しが認められるとは限りません。
自治体によっては、賃貸住宅の入退去時の紛争を防ぐ目的で、契約の際の説明を求める条例を置いているところがあります。対象となる事項、説明の方法、書面の様式は自治体ごとに異なるため、該当する自治体の条例の原文で確認が必要です。国土交通省は、原状回復をめぐるトラブルとガイドラインを公表しており、契約時の説明や入居時の記録の考え方の参考になります。
契約書面を受け取った後で、条件の変更を求めるとき
契約書面を受け取ってから、特約の内容に気づくことは少なくありません。このときの進め方は、契約が成立する前か、後かで変わります。
成立前であれば、署名や押印をせず、変更したい条項を特定して、書面(メールを含む)で申し入れます。貸主側が応じるなら、特約の追記か、契約書の該当条項の修正で足ります。応じられない場合は、契約を見送る判断もあり得ます。成立後に変更したい場合は、双方の合意が必要で、覚書や変更契約書を作ります。一方の申入れだけでは、契約の内容は変わりません。
書き方の例(一般的な例) 覚書に書く内容
変更の特定
理由協議するとだけ書くと、結論が出ないまま契約が進む。条文を特定して書き換える。
効力の始まり
理由契約書との関係を明記して、どちらの書面が優先するかをはっきりさせる。
預り金の扱い
理由変更の協議が決裂した場合の出口を先に決めておく。
国土交通省が公表している賃貸住宅標準契約書は、法令で使用が義務づけられているものではありませんが、契約書の頭書と本文を分けて、当事者の権利と義務を整理するひな形として使われています。標準契約書と比べて、特約がどこにあるのか、標準と異なる扱いはどこかを確かめる方法は、住宅の賃貸借契約書の読み方で詳しく書いています。
確認契約書面を受け取ったときに確かめる問い
預けたお金の名目は何か。契約が成立しなかったときの返還の定めはどこに書かれているか。
返還の期限と条件が書面で確認できれば、見送りの判断がしやすい。
重要事項の説明は、お金を預ける前に行われたか。
預け入れと説明の前後は、後で争うときの事実の一つになる。日付を記録する。
原状回復、更新、解約予告、保証の項目は、説明の中で触れられていたか。
これらは入居後に争いになりやすい項目で、重要事項の項目には契約期間と更新、敷金などの精算が含まれる。
特約の条項は、標準的な契約書に比べて、借りる側に不利になっていないか。
借地借家法30条は、建物の賃貸借の更新などについて借主に不利な特約を無効とする。個別の条項の有効性は条文ごとに確かめる。
変更を求める場合、条項を特定して書面で申し入れたか。
口頭の了解では、後で内容が分からなくなる。
立場別に見る:申込み・預り金・説明の場面
立場別の起きがちなことと、書面での手当て
借りようとする人
起きがちなこと
- 審査の結果が出る前に、部屋の確保のためとして預り金を求められる。
- 預り金の領収書に、充当先も返還の条件も書かれていない。
- 契約書面の案が、署名の当日にならないと見られない。
書面での手当て
- 申込書・預り証の写しをもらい、返還の条件を確認する。
- 契約書面の案を、説明の前に見たい旨を依頼する。
- 支払いや署名の日付をメモに残す。
貸主(オーナー)
起きがちなこと
- 管理会社や仲介業者に任せきりで、申込金の取扱いを把握していない。
- 審査が長引き、申込者に待たせたまま別の申込みを受ける。
- 契約前に鍵を渡してしまう。
書面での手当て
- 申込書・預り証の様式に、返還の条件と成立の時点を書く。
- 審査結果の連絡の期限を、管理会社と取り決める。
- 契約成立前の鍵の引渡しは、条件を書面で決める。
管理会社・仲介業者
起きがちなこと
- 担当者によって、預り金の扱いや説明の順序が異なる。
- 契約書面の内容と、重要事項の説明が食い違う。
- 申込みの撤回の連絡を電話だけで受け、記録が残らない。
書面での手当て
- 預り金の受領と返還の手順を、社内の書式にそろえる。
- 重要事項の説明書と契約書の条文を照らし合わせる。
- 撤回の連絡は、受領した日時を記録する。
業者の関与の有無(宅地建物取引業者か、貸主本人か)で、使える条文が変わります。誰が受け取ったのかを最初に確かめます。
起きがちなこと
入居申込から契約までで起きがちなこと
- 「申込金」という名前だけで、返還されるのかどうかを確かめずに支払ってしまう。
- 重要事項の説明の前に支払いを求められ、断りにくい雰囲気になる。
- 契約書面を受け取ってから、原状回復や解約の条項に気づく。署名の前に変更を求めず、そのまま署名する。
- 覚書で「協議する」とだけ書き、協議が整わないまま入居の日が来る。
- 預り金の返還を求める書面で、条文の位置を取り違える(法律本体と施行規則を混同する)。
- 貸主本人が直接貸している取引と、仲介業者が入る取引で、使える規定が違うことを見落とす。
- 個人情報の提供先(保証会社・緊急連絡先)を確かめずに、同意の欄に署名する。
よくあるご質問
入居申込書を出したら、契約は成立していますか。
申込書は入居審査のためのものであることが多く、提出だけで賃貸借契約が成立するとは限りません。民法は、申込みに対して相手方が承諾をしたときに契約が成立するとしています(民法522条)。申込書や預り証に、成立の時点がどう書かれているかを確かめます。
契約前に預けた申込金は、契約しなかった場合に戻りますか。
申込書や預り証の定めによります。契約が成立しなかったときに返還する趣旨のものが多いのですが、名目だけでは判断できません。宅地建物取引業者が受領した場合は、申込みの撤回の際に預り金の返還を拒むことが、施行規則で禁止されています(宅地建物取引業法施行規則16条の11第2号)。
重要事項の説明は、お金を払う前に受けるものですか。
宅地建物取引業者は、契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして書面を交付して説明させる義務があります(宅地建物取引業法35条1項)。お金の受領との前後を直接定めた規定ではありませんが、説明を受けてから判断できる順序で進むのが本来の姿です。
重要事項説明書と契約書は何が違いますか。
重要事項説明書は契約の前に、借りようとする側が判断するための説明資料です。契約書面(37条書面)は契約が成立したときに交付され、成立した契約の内容を書面で残すものです。賃貸借では37条2項に記載事項が定められています。
貸主が自分で入居者を募集している場合も、宅地建物取引業法の説明義務はありますか。
宅地建物取引業は、宅地建物の貸借の代理または媒介を業として行うことを指します(宅地建物取引業法2条2号)。貸主が自分の物件を自分で貸す場合は、貸主本人には仲介業者のような義務はかかりません。ただし、民法や消費者契約法、契約書の定めは適用されます。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の賃貸借への当てはめは、契約書の文言、物件の状況、当事者の事情によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov 法令検索(法令API)で確認した現行のものに基づき、まだ施行されていない改正は現行の内容として扱っていません。参考: e-Gov法令検索 / 国土交通省 / 消費者庁 / 法務省